2ペンスの希望

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ヒントとコントが‥

藤井青銅『幸せな裏方』の中から、印象に残った記述を二つ三つ。

この時、ぼくはおぼろげながら「ラジオとテレビの立ち位置の違い」ということを感じた。つまり、ラジオを聞いている人の間ではとっくの昔に「面白い」と評判になったことが数年遅れてテレビになり、そのテレビを見て初めて「面白さ」を知る人々がいる。それが世間の大多数なのだ。‥‥(いまの方は、この「ラジオ」の部分を「インターネット」に置き換えて読めば得心がいくのではないだろうか)
いとうせいこうさん(だったと思う)が、「テレビは情報の終末処理場だ」とどこかに書いていたのを久しぶりに思い出した。

本でも、音楽でも、番組でも、ぼくのポリシーは「企画モノこそ、ちゃんと作る」ということ。逆に言えば、「ちゃんと作った企画モノの方が、面白い」ということなのだ。
ぼくはいつも余計なことをし、その余計なことは、たいていの場合大変だ。しかし、大変だけど、その方が面白いのだから、しかたがない。

藤井さんの言う「企画モノ」とは、注文(オーダー)を受けて作る「受注モノ」のことだと読んだ。局のプロデューサーや出版社の編集者から持ち込まれた企画。そこには当然、予算や時間をはじめ様々な制約・条件が付く。自由にのびのび気まま好き放題には作れない。俗にいう、お座敷がかかる、ってやつだ。当たり前だが、腕がなければ呼ばれない。プロ、職人の世界だ。
なのに、映画の世界には、受託仕事より自主制作・自主映画の方がけなげでたっといと評価する風潮が今も根強い。お仕着せ仕事はテキトーに流し、自主企画オリジナルこそ全力投球、請負より自主の方が上等というわけだ。
しかし、アマチュアの気まぐれ・まぐれ仕事をプロとも職人とも呼ぶわけにはいかない。

あの人のなにげない一言に、実は深い教えがあったり、なかったり‥‥。誰の人生にも、ヒントとコントが詰まっている。
軽口好きのイチビリとしては、「はじめに」のこの締めフレーズが一番 好き。