2ペンスの希望

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千代鶴是秀

今年前半読んだ中で、抜群・出色の一冊
土田昇 著『職人の近代 道具鍛冶千代鶴是秀の変容』【2017年2月みすず書房 刊】
土田昇さんは1962年生まれ。東京・三軒茶屋に店を構える大工道具屋「土田刃物店」の店主さんだ。(余談だが、四半世紀前 三茶に住んでいたことがある。その頃は父君土田一郎さんがまだ健在だった。朝夕行き帰り毎日のように店の前を通った。大通り世田谷通りに面しながら、目立たず飾らずひっそりした店構えは、扱う大工道具と同じ風情・
たたずまいだった。)
本の中身は現物にあたって貰うしかないが、明治大正昭和を生きた「達者な」職人・その世界では不世出と称えられる道具鍛冶の芯に迫ろうとする筆遣いは、やわらかにして鋭い。 職人の奥深さ、欲深さに届いていると感じた。おススメ。
オマケ①:この本には、千代鶴是秀が作った道具の写真は幾つか載っているが、肖像はない。写真家藤原正が写した晩年の是秀像二枚を挙げる。

オマケ②:昨日から同じ土田昇さんの前作
『時間と刃物 職人と手道具との対話』【2015年1月 芸術新聞社 刊】も読み始めた。こちらもおススメ。
十数年に亘る雑誌連載を纏めたものだが、大工道具初級者にはこちらの方が読み易く取っつき易いかも。