2ペンスの希望

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いでよ映画史家

京都ふや町の旧作VHS専門店「ふや町映画タウン」については何度か書いてきた。
少し前に出掛けた時、O店主と話したことが頭を離れない。
「映画の歴史が始まって一世紀超、1980年代に LDやβmax・VHSなどが普及してから既に四半世紀が経った。なのに、所有する・私有される映像の時代の歴史的意味についての記述が乏しい。映画論や作家論は腐るほどある。メディアの進化論もあまたある。だが、私有時代以降までを見据えた映画史的叙述は見かけないね。」
そんな話だった。
アナログ技術からデジタル技術へ‥、ウエヴ時代=脱所有(脱私有)時代をも射程に入れた映画の受容形態の変容を虫瞰・鳥瞰した論述は見当たらない。不勉強なだけかもしれない。どこかの大学の紀要あたりにひっそりと掲載されているのかもしれないが‥目に触れることは難しい。ネット上には散見するが、上っ面を撫でただけの初級入門編ばかりでもの足りない。‥ということで、
「誰か書かないなぁ」ということになった。
「所有映画史第一世代のO店主が書けばいいじゃない」と勧めたが、「冗談じゃない」と一蹴されてしまった。それからうっすらぼんやり考え続けているのだが‥‥、
冗談じゃない、最早ベータもVHSも知らない、LDといえば「学習障害」を思い浮かべる若い世代がますます増えていく。掃いて捨てるほど増えた「映画研究者」の皆様、過去と重箱の隅ほじくりにかまけないで、「所有⇒脱所有時代を踏まえた新しい映画史」を書いてみてもらえないだろうか。
いでよ、新映画史家。古代史ではなく、現代史を記せ。