2ペンスの希望

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難儀なこと

難儀なことになっている。
脚本は練られてる、役者も悪くない、演出も巧み、スタッフ各パートの仕事ぶりも丁寧、健闘している。普通に考えればよく出来た映画・合格点。なのに、何故か不満が残る。不全感がぬぐえない。無い物ねだりなのはわかってる。昨今、市中に出回る映画には、多数の粗悪品が混じる。目も当てられない出来損ないがヒットしている。そんなご時世、ごくごくたまに出会う「出来のいい」映画を愛でなくてどうする。確かにそのとおりだ。
ウエルメイドに作られた映画が、自分の中に眠っていたもの、気付かなかった何かを掘り起こしてくれる、自覚させてくれる。上等‥‥御の字じゃないか。それ以上何を望む。
けど、ど厚かましくも考えてしまう。
映画の最良は、「内なる自己に気付かせられる」ことなの。それって、結局 予定調和じゃないの。作る前から見えているものを損なわないようにそっと差し出す、それが映画なの。物足りなさのもとにはこの予定調和への不満・不信がある。
映画は、これまで誰も(!)見たことがなかった新大陸の発見・上陸・駐留を目指す試みじゃないの、そんな思いがぬぐえない。誰も‥作り手にすら見えていない世界、ましてや観客には見えない地平に、ともに漕ぎ出すワクワクざわざわ胸騒ぎ。
触ると火傷するヒリヒリ・ベラボーな映画に出会いたい思いがつのる。