2ペンスの希望

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そして誰もいなくなった

今 映画は一人でも作れるようになった。機械技術の進歩のお陰と、有り難がる声が聞こえる。一方、お陰でえらい迷惑、そんなつぶやきがあることも忘れたくない。
撮影所があった頃の専門職・技術集団は見当たらなくなった。照明部が消え、録音部が減り、大道具・小道具・美術部の影は薄くなった。「当時は、どんな素人監督がやってきても、スタッフさえしっかりしていれば、及第点の映画が出来た。頭でっかちの出来損ない監督でも何とかなった。スタッフが素人の寄せ集めではそうはいかない。碌な映画は期待できない。」 喜寿を超えた京都のベテラン美術監督とそんな話しになった。  苦心して若い衆を育てても、喰えない。技術スタッフはテレビやCM、PR映画などに流れて生き延びはするものの、なかなか映画は出来ない。
散り散りになった技術は取り返しがつかない。伝承は難しくなるばかり。便利は不便。機械技術の進歩のせいで人が要らなくなり、映画は痩せ細ってしまった。
そして誰もいなくなった、監督・映画作家は山ほど増えたというのに。
そして誰も見なくなった、そんな日が来なければ良いのだが‥。