2ペンスの希望

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『新しい民』

今年最後の映画館。大阪九条シネ・ヌーヴォで一般公開二日目山崎樹一郎さんの新作『新しき民』を観てきた。少し前のチラシ(上)と公開チラシ(下)を挙げる。


初日は満員スタートだったようだが、二日目の日曜日は30名あまり、5割弱の入りだった。多いのか少ないのか微妙な数字だ。
本ブログは基本、個別映画評はやらない方針だ。それでも、若くて新しく、力のこもった(と見えた)映画に出会えば応援したい。映画は丁寧に作られた「自由で豊かな」ものだった。端正で率直、逃げもてらいもない分かり易い「直球勝負」はすっきりさわやか、気持ちよかった。型にはまらない、というより、型を破ろうという静かで強い意志がはっきりと見て取れた。とりわけ、中村智道さんの線画と佐々木彩子さんのピアノが良かった。クラシカルからフリージャズまで闊達自在。英訳タイトルより原題の含意の深さも良い。
12月に入って、濱口竜介『Happy Hour』、山崎樹一郎『新しき民』と「新しい」映画が続いていて、頼もしい。彼らを見ていると、かつての映画監督がプロのスタッフやキャストを「統べる(統率・支配する)」職能だったとするなら、これからの監督業は、他分野のプロ(映画の素人たち)をどう「オルガナイズしていくか」(いかに巻き込み、力を発揮させ、その力を有機的に統合・組織化していくか)が求められているような気がしてくる。オルガナイザー(組織工作員)素質・コーディネイター(調整統括員)資質。
芯棒の辛抱!?
久しぶりに見直した山崎樹一郎さんの前作『ひかりのおと』予告編の冒頭にはこうある。
「牛飼が 歌よむ時に 世のなかの
         新しき歌 大いにおこる  ―伊藤左千夫
みずみずしく、すがすがしい。 スレッカラシには逆立ちしてもかなわぬことだろう。