2ペンスの希望

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大衆演劇①

樋口次郎 沢竜二 美里英二 見海堂真之介 里美たかし‥‥と聞いてピンと来る人はどれくらいおられるだろう? では 梅沢富美男 松井誠 早乙女太一 チビ玉三兄弟 ‥‥とくれば? そう大衆演劇の新旧スターさん達だ。
少し前にラジオで橋本正樹さんという大衆演劇ファンのライターの話を聞いて魅かれた。何かの足しになるかと思い、図書館から何冊か借り出し読んでいる。「あっぱれ!旅役者列伝」【2011年1月 現代書館 刊】「晴れ姿!旅役者街道」【2014年5月 〃 】
大衆演劇 旅芝居 ドサ廻り 何度かの浮き沈みを経ながら生き残って今に至る。
二冊目「晴れ姿!‥‥」の「まえがきにかえて」にこうある。
平成二十六年四月現在、全国に大衆劇団は百三十ある。その劇団にとっては生命線というべき常設劇場は年々増えつづけて四十一館。とくに近年オープンした劇場は、照明や音響設備を充実させ、‥(中略)‥客席の八割以上を女性が占めるが、とりわけ女子中高生、OLが目立つようになってきた。」常設劇場以外でも、全国津々浦々のヘルスセンターやホテルで日々公演している。(大衆演劇「公式」総合情報サイトと銘打った0481.JPには公演先一覧として233が挙がっている=2015年11月7日現在)
戦前戦後の700劇団、劇団員50名を超える一座がひしめいた最盛期には遠く及ばないものの、130劇団 平均座員11名を擁する立派な「業界」である。
劇場規模は、大半100席〜250席、入場料は1,200〜2,500円平均1,500円 昼夜二回 前狂言狂言ショー切り狂言で3時間40分たっぷり。演目は日替わりで毎日変わる一ヶ月公演。劇場側と分け合う入場料だけでは、とてもやっていけない。そこで、お花と呼ばれる「祝儀」現金プレゼントが欠かせない、と橋本さんは書いている。
旅役者の月給は現在五万円が相場である。「食住込みの楽屋暮らしなので、給料はサラリーマンの小づかいみたいなもの」とあっさりというが、それにしても薄給だ。その少ない分をおぎなうのが、お花なのだ。‥(中略)‥つまりは、文字通りに銭のとれる芸人になることを、旅役者は実践している。
生々しく熱く濃い世界
映画に直結するヒントはおいそれとは掴めそうにないが、生き残りをかけた切磋琢磨 たゆまぬ精進、芸磨き。先輩やライバルを鑑に芸を“盗む”姿勢。「見せてやるではなく、見ていただく」のサービス精神。
なによりなのは、一年三百六十五日二十四時間どっぷりたっぷり芝居のことだけを考えることの出来る生業が生き続けていることだ。 (この項 続く)