2ペンスの希望

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映画的演劇だった

先回の「暴言です」の素 くだんの映画『福田村事件』を観てきた。週末の神戸 朝9:40からの上映。公開から8週目に入っての朝一の回、102席のキャパ に25席以上が埋まっていた。興行的には健闘 好成績の部類だと思う。出演者の一人水道橋博士の「ツイッター(今は X と改称したようだが)」にはこうある。

『福田村事件』は、 9月1日より公開され 全国でも十数劇場での規模のミニシアター興行のスタートだったが、その後、拡大公開になり10月12日までの観客動員数は 15万人超えの15万1051人、興行収入は2億円超え(2億255万6542円)を記録。これまで133劇場で拡大上映されている。

慶賀の至り。

で、どうだったのか。一言でいえば、映画じゃなかった。映画的演劇を見せられた感じ。いや、立派に映画なのだから、正確に言うなら「拙管理人の考える映画」じゃなかったというべきだろう。

悪い出来ではない。出来損ないの生煮えでもない。平仄はそれなりに合っている。ただ失礼ながら「映画もどきの映画的演劇」だった。

役者諸氏は、一所懸命 台詞を喋りながら精一杯演技をしている、嚙むことも被ることもなく熱演だ。

まるで舞台を見ているように進行は たるまず よどみない。ただ、言いっ放しの問題提起型台詞の数珠つなぎで、葛藤や相克といった深化には至らない。だから劇=ドラマには進まない。説明台詞と底の浅い描写では映画的な空間は生まれないし、映画的な時間も流れない。

映画的な「空気」とは違っていた。残念なことだ。戦犯が誰なのかは問わない。プロデューサーなのか、監督なのか。けどやっぱり、スクリーンの向こうに厚み奥行があったかと問われれば 疑問符が浮かぶ。人物に血が流れているかどうかも怪しい。と、不満や注文が次々出てくる自分には 正直 呆れる。ゴメンナサイ、だ。ただ、国民的巨匠かのアニメ映画の大監督の最新作よりはずっとマシだった。後味は良かった。千円少々で2時間あまり楽しんだ。