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重労働と多少の奇跡

4月にキャメラマンのことを書いた。それで思い出して、山口猛編『映画撮影とは何か キャメラマン四〇人の証言』【平凡社 1997年 刊】を読み直した。
刊行当時に買って読んだと記憶するのだが、見当たらなかったので、近くの図書館から取り寄せて読み直した。
20年以上前のものなので、フィルムやキャメラやレンズや照明、美術、特機の話など今となっては古めかしい昔話が多いのだが、撮影現場やスタッフの関係のありかたなど生な逸話がたくさん綴られていて面白い。おススメ。
徒党を組んで映画を作ろうという若い人には今でも大いに参考になると思う。
宮川一夫なんてレジェンド・大御所の話より、撮影所亡き後、ピンク映画や町場の仕事で育てきた駆け出し・(当時の)若い世代のインタビュー記事の方が読みごたえがあった。
一番印象に残ったのは、長田勇市キャメラマン(1950年生)の項。
● 撮影に余裕を持たせるためのスタッフ編成
● 低予算なりの撮り方 などなど
具体実践的で今でも役に立つ知恵・アドバイスだ。心ある人は現物にあたるべし、だ。
最後の一節を引用する。
僕はあんまりいい状況で仕事をしてきたわけではないし、撮影所も知らない。だから逆に、今はどんな仕事がきても自由にできるという気がする。ライティングなどから解放されたということもあります。監督の理解さえあれば、撮影はどうにでもなるものです。
 最後に、僕の好きな、大事にしている言葉を。
        映画には作者はいない
        ただ重労働と――
        多少の奇跡があるだけ (パスカル・ジャーデン)
 」 (375頁)
重労働とは、しんどい仕事というより、重量・重みのある仕事と解したい。 いい言葉だ。