2ペンスの希望

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「ちいさすぎてはいらない」

さらにさらに「背反有理」を続ける。
ちいさすぎてはいらない」というシナリオがある。書いたのは田辺泰志監督。発表された初稿は今から45年前1968年6月。【雑誌「小説と映画」3号 ’68 春 】
シナリオ冒頭には、「屍体の方がちいさすぎて棺桶にはいらなかったという話」 とある。アクションあり、裸あり、ナンセンスなギャグが連なるスラップスティック・コメディ仕立て。チャップリンキートンらを彷彿させる初期無声映画の趣き。しゃれた会話しなやかな動き。さらには007ばりの改造車・カーチェイス、吹っ飛んだ車の屋根には殺し屋がしがみつき、空からは女も降って来る。バズーカ砲やヘリコプターの墜落シーンも登場する。
あまりにスケールが大きすぎて仕掛けにお金が掛かりそうなこともあってか、映画化はされていない。
田辺監督は、1971年に『空、見たか?』を製作・監督、1974年『竜馬暗殺』のシナリオを共同執筆、その後何本か劇映画テレビドラマのシナリオを手掛けたのちは、既成の映画界から遠く離れ、山陽倉敷の地で新しい映画を作るべく準備中だ。タイトルのネーミング・コピーライトのセンスがにくい。そそられる。第一作「空、見たか?」準備中の映画は「もう、ええじゃないか」「あとの祭り」「おえん」「ゆめのまちのゆめの」「ラッキィラブ」など山ほどある。「ちいさすぎてはいらない」も改稿を重ねている。
最初の発表誌のあとがきにはこう記されていた。「眼を閉じることを求める映画、眼を閉じてそこに眼を創ることを求める映画とは一体どのような映画なのか
まぼろしの映画は映画のまぼろし
暗く輝く
明るい闇
見たことも無い過去
懐かしい未来
役に立つようで気が利かない
老人特有の若さ
無器用な器用
働くことは遊ぶこと
黙って答える
正直な嘘つき
‥‥「背反有理」は果てしない。

深化と進化が真価を発揮するときは、どきどきする。  潮時はもう近い。