2ペンスの希望

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歌は唖(むご)に

上野英信さんの『地の底の笑い話』【岩波新書639 1967年5月初版】の扉に
掲げられた言葉――
歌は唖(むご)にききやい
道ゃめくらにききやい
理屈ゃつんぼにききやい
丈夫なやちゃいいごっばっかい
  (鹿児島俚諺)
いわずもがなだが、上野さんはこう解説している。
「真実の歌がうたえるのは口のきけない人間だけである。真実の道が見えるのは眼の見えない人間だけである。真実の理論を知っているのは耳の聞こえない人間だけである。五体五感の健全なやつの言葉など、口さきのたわごとに過ぎない。ゆめゆめ信用してはならないぞ」
誰にでも分かる優しい言葉、短く深い言葉こそが、一番遠くまで届く。そう思う。