2ペンスの希望

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photograph

写真家のHさんからこんな話を聞いた。
photographの訳語として〈写真〉という言葉が定着したのが、いつ頃誰に始まるものなのかはハッキリしていない。photographの原義はphoto-:光の-graph:記述・記録 ということであり、元々〈真(真実)を写す〉という意味は含まれていない。〈光の画〉といったところか。実際1930年代には『光画』という名の雑誌も発行されていた。」成る程ネ。それにしても、「写真:真を写すもの」という訳語の引力は強い。強すぎる。 この国では、写真の持つ記録性・写実性を疑うものは、天邪鬼・ひねくれ者・へそ曲がりだと疎んじられることを覚悟しなければならないようだ。真実・事実・実物・実体・実態・実在‥証拠写真という言葉まである。
しかし、写真もまた一個の表現物である。誰かがレンズを向け、ファインダーを覗いて、フレームを切り、ある時間を切り取って拵えたものなのだ。
絵画が人間の手により画材を使って描かれた主観的な「フィクション」であることを認めない人はいないだろう。
とするなら、写真もまた一個の「フィクション」だと考えても良さそうに思うのだが‥。
リアリズムというスタイルをとった作り物。 虚も実も孕んだ、多彩で自在な光の記述。
どうだろうか。