正岡子規の随筆集『筆まかせ』に「ベース、ボールほど愉快にてみちたる戦争は他になかるべし」という一節がある。平出隆『白球礼讃』【1989年3月刊 岩波新書】のあとがきで知った。
子規も平出も無類の野球好きである。
続けてこうある。
「戦争とは物騒な、ということなかれ。「戦争」と「愉快」との、語のコントラストを味わうべきことばだろう。ベースボールという場所では、真剣味も遊びごころも、悲壮も陽気も、たくらみも無邪気も、ひとつの場所に融けあって豊かにひろがる、ということだろう。それは、世界と同じ深さとひろさをもつゲームだ。世界の深まりやひろがりとたたかうゲームなのだ。」
さて、提案。「ベースボール」を「映画」に置き換えて読んでみてはどうだろう。
「映画という場所では、真剣味も遊びごころも、悲壮も陽気も、たくらみも無邪気も、ひとつの場所に融けあって豊かにひろがる。それは、世界と同じ深さとひろさをもつゲーム。世界の深まりやひろがりとたたかうゲームなのだ。」
愉快な戦争を本気で遊ぶ。
野球も映画も、草◎◎もプロ◎◎も、やる方も観る方も、手を抜かず、精いっぱい愉しみながら、まだ見ぬ地平を目指して貰いたい。