2ペンスの希望

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面白さを手放すな

経験と実感に裏打ちされた言葉には説得力がある。
ドキュメンタリーは劇映画の三倍面白くないと通用しない」と原一男さんは言った。
ぼくが映画青年のストーリー否定論を、あまり信用できないのは、面白い筋を考えるより、否定するほうが、ずっと簡単なのを知っているからだ」と長部日出雄さんは書いた。
どんなに小さな世界にもワクワクハラハラドキドキはある。家の中にも宇宙はある。身の回りのありふれた出来事の中にも歴史はある。すべては遙かな過去と遠い未来につながっている。そう考えれば、簡単にワクワクハラハラドキドキの「面白さ」を手放すわけにはいかない。よし、世の中のほとんどが面白くないことで満ちているとしても、創作や表現の世界で「面白さ」を放棄することは自殺行為につながる。「面白さ」のキャパシティをどれだけ膨らませることが出来るか、表現の醍醐味はそこにある。そこにしかない。
観察すること、感じること、考えること、考え続けることだ。
見慣れた風景が見慣れないものに変わって見えてくる瞬間がきっとある。普段は目に見えない関係や日常の裂け目が浮かび上がってくる。創作の女神は遠くにいるわけではない。すぐ近くで黙って微笑んでいる。