2ペンスの希望

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紙ヒ拾遺 閉口

シネフィル諸君の発見主義・発掘主義には閉口する。こんな凄い奴を発見した。こんな良いのが埋もれていたのを発掘した。皆知らないだろう。オレ様だけが気づいた。エッヘン、と鼻高々だ。
長部さんも書いている。「映画を語る者がしばしば陥りがちな先物買いや、トリビアルな部分を過大に評価することによって、じつは自分を顕示したい欲求から生ずる深読み」は慎みたい。【「夢の返還―『家族ゲーム』評より:『紙ヒコーキ通信2 映画監督になる法』所収」
同時に、「著名監督の映画は、全部が名作で駄作や失敗作なんて皆無。娯楽映画・プログラムピクチャーの量産監督の映画なんてどれも駄目、鑑賞に価しないモノばかり」というのも早計だ。事実、最近見直した「世界の」K監督、M監督の映画はいずれも凡作だった。(製作当時はそれなりに評価されたのだろうが、半世紀の時間の波に洗われて、なおかつ瑞々しい輝きを保つのは考えるほど簡単じゃないということ。稀有なのだ)名監督の駄作もあれば、駄目監督の名作もある、青天の霹靂。天の配剤。
それが映画の面白さであり、怖さなのだ。その振れ幅は他の何よりも大きい。
それもまた魅力のうちだ。だからこそ浴びるように見るしかないのだ。沢山見続けることを重ね重ねお薦めする所以(ゆえん)。