2ペンスの希望

映画言論活動中です

本 三冊

しばらく間が空いた。雑事にかまけてブログの更新が疎かになってしまった。

それでも何度か映画館にも出かけたし、本も読んできた。31年ぶりのスペインの巨匠の長編新作や2000年に作られたハンガリーの監督の4Kレストア版、5分のYouTubeから生まれたベストセラーの映画化イタリア映画などなど。残念ながらどれも期待通りとはいかなかった。(出来が悪かった訳ではない。観る前の当方の期待が膨らみ過ぎたせいだ。♬ 悪いのは 僕のせいさ 君じゃない(^^♪)北山修作詞 筒美京平作曲の昭和歌謡

ということで、最近読んだ本を三つばかし挙げてみる。どれも、映画と言語についてあれこれ考えるヒントになった。

🔳杉本穂高さん(1981生)の『映像表現革命時代の映画論』【2023.12.18.星海社新書】

タイトルは物々しいが、無声映画時代に戻って映像表現技術の変化、生産・受容の変遷を辿り直そうとする姿勢は悪くない。「ムーブとリアル」「トーキーという分断点、デジタルという結節点」といったフレーズが印象に残る。

🔳渡辺将人さん(1975生)の『アメリカ映画の文化副読本』【2024.1.25. 日本経済新聞出版】

筆者の目論見・親切とは裏腹かも知れないが、改めて、映画というものが、「国境や民族や歴史」を越え、「地域固有の文化・習慣・慣習・価値規範の漂白・希釈」を経てなお享受・堪能できるパワフルでユニバーサルな表現物であることを再認識できた。

🔳伊藤潤一郎さん(1989生)の『誰でもよいあなたへ―投壜通信』【2023.10.24. 講談社

「投壜」「不定(未定?)の二人称」といったキイワードを手掛かりに「言葉と映像」「記号と事象・事物」…… 表現行為の深奥に分け入っていくことであたらしい地平が拓かれていく。そのスリリングはカ・イ・カ・ン。