2ペンスの希望

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ミシマ社

今日も本の話。
三島邦弘さんという人の書いた『計画と無計画のあいだ 「自由が丘のほがらか出版社」の話』(2011年10月河出書房新社 刊)
「倒産百二十二社、創業十一社」と言われる出版業界の構造不況が続く中、三島さんは新しい出版社を立ち上げた。その顛末を書いた本だ。
起業の動機(三島さんに拠れば「計算式」)はこうだ。以下引用。

「いい本をつくり、しっかりと読者に届けたい」

「ひとつひとつの活動が、未来の出版を築く一歩でありたい」

つまり、ぼくにとって「出版社をつくる」ことは「未来を築く」ものでなければならなかった。でなければ、どこかの出版社で、これまでどおりの活動をしていけばいいだけだ。もちろん、それを否定しているわけではない。ただし、自覚手的であるべきだとは思っている。何に対して自覚的であるべきかといえば、いま自分たちが精を出してやっている活動は、「かつて」よくできていたシステムに乗っかってのものであることに対して、である。あくまでも、現在乗っかっているシステムは、延命措置でしかない。そして、おそろしいことに、ぼくたちはそのシステムの上で、がんばればがんばるほど、「延命」に加担している。望むと望まざるとにかかわらず、それは、グローバル資本主義社会において、先進国に住む人たちが「豊かさ」を享受するとき、知らず知らずのうちに途上国から「搾取」している、その構図と大差ないのかもしれない。
そう考えた三島さんは、
これまでのルールに乗る、のではなく、自分たちで、その次の時代のルールをつくっていくことはできないのだろうか。そのために、一度、原点に帰ってみる」と、小さな出版社を作った。(上述『計画と無計画のあいだ 「自由が丘のほがらか出版社」の話』2011年10月河出書房新社 刊 96〜97pから無断で引用しています)
彼の本作りの原則はシンプルだ。
ターゲットを設定しない。人間を信じる。
人間である限り、“血の通ったものに”反応する、と三島さんは言う。

「出版」を「映画」に置き換えて、読んでみて欲しい。