2ペンスの希望

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総重量860kg→約910g

思うところあって、昔の日本映画についての本を読み返している。
鈴木晰也さんの『ラッパと呼ばれた男』(1990年8月キネマ旬報社刊)。
鈴木さんは元大映京都撮影所長、長く仕えた名物社長プロデューサー永田雅一について書いた本だ。以前読んだ時には気にも留めなかった箇所が目に付いた。1052年(昭和32年)3月、わが国初のビスタビジョンカメラを使うくだり。
製作の現場でまず参ったのはキャメラの重量であった。総重量八六〇キロ、キャメラの本体だけで二二五キロ、普通のキャメラの四、五倍もあり、このとり扱いは大変である。‥(中略)‥現場に飾っておくものではない。これを「使い」「こなす」ことが現場の仕事なのである。‥(後略)
キャメラの総重量860kg!当ブロガーが仕事を始めた頃にもNCミッチェルという堅牢なキャメラが使われていた。とても一人では扱えないべらぼうな重さだった。
それから六〇年、今では僅か910gの一眼レフ スチールカメラで撮影された長編劇映画が劇場公開される時代になっている。
確かに、機材と技術は長足の進化を遂げた。
しかし、それ以外のことやものはどうなのだろうか?
強くなったのは「資本」と「技術」だけというのは、映画に限ったことではないのかもしれないけれど‥‥。