2ペンスの希望

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億劫

自慢じゃないが(と書くときは、必ず幾ばくかの自慢が潜む、と小田嶋隆さんも書いているが‥)生まれてこの方一度も外国に行ったことがない。映像関係の仕事をしている中では珍しい少数派だ。そうでなくとも昨今、希少種だろう。お座敷が掛からなかった、というわけでもない。しかし、何となく遠ざけてやってきた。語学がからっきし出来ないというせいも大きいが、思えば、引っ込み思案・びびり症なだけ、何より億劫だった。そう思っていたら、最近読んだ本に、こんなくだりがあった。
松崎之貞さんという方が書いた『「語る人」吉本隆明の一念』【光文社2012年7月刊】。松崎さんは、晩年の吉本の座談に接してきた書籍編集者だ。こうある。
‥吉本(隆明‥引用者註)は、一度も外国に出たことがなかった。(中略)‥」と書き、「記憶で書くから正確ではないが、要旨はまちがっていない。」と断った上で、吉本の座談を記している。
外国へ行くというのがとても億劫だというのが大きな理由ですが、わざわざ外国まで出向かなくても、たいていのことはこっちにいてもわかるという自負みたいなものもあります。本を読んだり、テレビを見て考えたりしていれば、外国のこと、世界のことは相当程度に認識できる。だからぼくは、日本を出なくてもそうまちがわないで判断できるとおもっています。
さらにこう付言する。
相当すごい台詞だと思ったから、その要旨だけはいまでも頭に焼き付いている。
そういえば、拙も「大切なことは目の前で起きる」という思いでやってきた。言われなき強がりだとしても、もはや改める気持ちはない。