2ペンスの希望

映画言論活動中です

針文字

学校をでて、映画の仕事を始めた頃の先輩が制作プロデュースした映画が完成した。大逆事件を管野須賀子に焦点を当てて描いた記録映画『100年の谺(こだま)ー大逆事件は生きている』(90分)だ。拙はまだ観ていない。
大逆事件と菅野については、通り一遍の知識は持っていたものの、菅野が書いたという「針文字手紙」については不勉強で知らなかった。
一見何の変哲もないただの白い半紙。光にかざすと無数に穿たれた針文字が手紙となって浮かび上がる、ということだ。写真を挙げる。


梯久美子さんというノンフィクション作家が書いた『百年の手紙--20世紀の日本を生きた人々』第4回(中日新聞2011/07/28Thu.)を引用する。
“図版で、あるいは現物で、歴史上の人物の書簡を数多く目にしてきたが、こんなに変わった手紙を見たのは初めてだ。一見すると何も描かれていないただの半紙。だが光にかざしてみると、針で開けたと思われる無数の小さな穴があり、それが文字になっているのがわかる。”
“ともに暮らした恋人である幸徳秋水のために、朝日新聞記者の杉村縦横に獄中から彼の無実を訴え、弁護士を世話してくれるよう頼んでいる。
 針文字で書いたのは、看守の目を盗んでひそかに外部に持ち出すためだ。手紙が書かれた頃は外部との書簡のやりとりも面会も禁じられており、出獄していく女性囚人に託して投函してもらった可能性が高い。”
“2006年に我孫子市内の杉村の邸宅から発見されたという。封筒もあったが管野の筆跡ではなく、彼女が獄中から何者かに託したのは手紙文が書かれた半紙だけだったと推測される。”
“取り調べが進む中で管野は、中心的なメンバーは死刑に処せられるとの感触を得たと思われる。明治天皇を襲撃する計画を話し合っていたのは管野を含めた4名で、幸徳はこれに加わっていなかった。しかし、これを機会に社会主義を一網打尽にしようとした政府は、著名な幸徳を首魁に擬したのである。幸徳まで重罪に問われる危険を感じ取った管野の、何とか彼の命を助けようとする必死の思いが、細かく穿たれた点の1つ1つから伝わってくる。”

針文字で書かれた手紙。なんと映像的なエピソードだろう。
映画の中でどう見せているのか、期待が膨らむ。
完成したばかりで、公開はこれからだが、九月中旬から下旬にかけて東京と京都で完成記念お披露目上映会が開かれる。
東京は9月14日(金)午後1時30分〜3時30分〜東京ウィメンズプラザ
京都は9月23日(日)午後2時〜 京都アスニー4Fホール
興味をお持ちいただいた方は、映画の公式HP
http://taigyaku-movie.net を訪ねてみて欲しい。
拙も京都の会に出かけてみるつもりでいる。