2ペンスの希望

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黄昏‥‥㉕

㉕は柳町光男 1945(S20)年11月 生。

柳町東映教育映画の契約助監督として出発し、ドキュメンタリーと劇映画を往還して映画を作ってきた。

『ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR』(1976年) 【制作:プロダクション群狼  制作費:500万円  配給:東映 16mm→35mmにブローアップして上映

『十九歳の地図』(1979年)【制作:プロダクション群狼  制作費:5000万円  配給:自主】

新聞を配達する、文字を書く、という日常的な行為を、柳町はあくまで具体的な、肉体的な行為(アクション)として捉え描く。

映画であれテレビであれ、そこでは幾度となく文字を書く場面がありながら、そかしそのほとんどは、ただの一度も、文字を書くということ自体をとらえようとはしなかったのだ。刑事が手帳にメモをする、あるいは恋人が手紙を書く‥‥思い出せばいくらでもあるそんな場面で、だが我々が見るのは、メモしているという意味であり、また手紙を書いているという意味であって、文字を書くという行為そのものではない。柳町は、行為する肉体に執着することで意味を剥ぎとってしまう。観念から遠く、具体性に下降していく(1979年プロダクション群狼 劇場用パンフレットに寄せた文章。太字強調は引用者)

映画の醍醐味は、観念でも意味やイメージでもなく、肉体や行為(アクション)としての具体性とその現存・現前にこそあるのだ――上野の主張はここでも揺るがない。