2ペンスの希望

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適性

すこぶる痛快な入門書を読んだ。
千野帽子さんの『俳句いきなり入門』【NHK出版新書383 2012年7月刊】
いきなりの始まりはこうだ。
あなたの「俳句適性」をチェック!
①俳句は、自分の言いたいこと(メッセージ)や感動を自分の言葉で表現するものだ。‥‥
以下、②〜⑩までの質問項目が並ぶ。
そして‥、こうつなぐ。
適性チェックにひとつも当てはまらなかったひとこそスタートラインに立つべし。それ以外の人、「自分を表現したい!」って人は俳句には向きません。
さらに‥続いて「答え合わせ」が披露される。
①の答え 「人間の言いたいこと」は数種類しかない。それを十七音に入れたら「私を見て」一種類になる。そんなものは作者以外読まない。
いっぽう「言いたいこと以外のこと」は無限だ。俳句は自分の意図にではなく言葉に従って作るものだ。だから自分で思いつかない表現が出てくる。自分の発想の外側に着陸できる。坪内稔典(ねんてん)さんも言うとおり、感動したから書くんじゃなくて、書いたから感動するのだ(『坪内稔典の俳句の授業』黎明書房、1999)。
「自分」なんて全員同じだが「言葉」は無限だ、と思える人は俳句に向いています。

と千野さんは断言する。
「俳句」を「映画」に、「言葉」を「映像」に置き換えて、
是非もういっぺん、読んでみて欲しい。

少しあとには、こんなくだりも出てくる。
俳句では「もともと言いたかったこと」より「結果」のほうが大事。自分より言葉のほうが偉いのだ。だから後者のために前者を平気で捨てるのが正解。これができない「言葉より自分のほうが偉い」人は俳句なんかやらなくていい。

「映像より自分のほうが偉い」人は映画なんかやらなくていい。  同感である。