2ペンスの希望

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製造中止

数日前、富士フィルムが映画用フィルムの製造を中止するというニュースが流れた。
撮影用の16mm35mmネガフィルム、プリント用の16mm35mmポジフィルムともに段階的に製造を終了し、今後はアーカイブ用フィルムの製造のみとするようだ。アーカイブ用フィルムとは、富士フィルムのホームページに拠れば、「映像情報を長期にわたって保存し、映画コンテンツを「文化遺産」として後世に残していくことを目的に、カラー画像の3色分解(セパレーション)を行い、安定した黒白画像(銀像)として記録するためのフィルム」ということだ。3色分解して白黒保存することで、500年以上画質が変わらないと謳っている。デジタル撮影された映画の保存用としてフィルムの優秀性が見直されるというのも、時代の皮肉か。
富士フィルムも大変なことだろう。映画だけじゃない、写真フィルムだって相当に厳しい筈だ。化粧品など新規分野の拡充が必至なのだろう。これで世界の映画フィルムメーカー三強の一角が崩れた。大手は米イーストマン・コダック社と独アグファ社になった。先に映写機メーカーや現像所の事業縮小、閉鎖が伝えられてきたが、ついに材料メーカーにまで及んだということだ。
早晩何処かの頓馬が、フィルム文化の灯を消すな、といった声を上げることだろう。(そういえば、数年前に8mmフィルムの製造中止が発表された時に出来た「フィルム文化を存続させる会」というのはどうなったのだろうか?何度かメーカーサイドとの話し合いを持ってきたと記憶するが‥。)
不用意発言は厳に慎みたいが、「文化」といえば何やら貴重で有り難く、守るべき・守られねばならない存在であるかのように語り奉るのは、性に合わない。この歳になると「べき」や「ねば」では動きたくない。「文化人」という言葉も心底嫌いだ。
映画用フィルムの製造中止は、残念ではあるが、イイとこ取りで済ますことは出来ない相談なのだと思い知るしかなさそうだ。数年前、某大手フィルム現像所が映画用フィルムの現像関連事業を縮小するというニュースが業界に流れた。製作プロデューサーとしてその高コストに永年苦しめられてきた拙は「いままで儲け過ぎてきたのだからいい気味だ」と毒づいたことがある。それをたしなめるかのように言い放った斯界の賢人の一言が忘れられない。「それでも現像所が無くなったら皆困る。ほどほどに儲かるように存続させていくのは映画界全体の責任じゃなかろうか」参りました。器の大きさが違うと猛省した。
敗北主義だといわれようと、与えられた状況・条件の中で、生き延びていくしかない。或いは、自力で映画フィルム製造の方途を切り拓く道を探ることだ。現に先に挙げた斯界の賢人は、映画用映写機の部品調達メンテナンスを世界のメーカーに打診して対応しようとしているようだ。ここら辺りで、日本の映画界四十年の惰眠の付けが回ってきたことを甘受して、反省して、進むことだ。
自分のことを棚に上げるつもりはさらさらないが、そう見えたら不徳の致すところ。