2ペンスの希望

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古文書その一「闇と青空」

四十年前に書いた「古文書」が発掘された。旧悪が暴露されたようできまりが悪い。
十代から二十代のはじめにかけてシネクラブ運動に参加していた。その頃の会報誌。
おそるおそる読んでみた。眼も当てられないほど酷くはなかった。(ん?いつまでたっても自惚れ鏡が手放せないなって‥‥その通〜り。) それでも厚かましく座興と備忘録のつもりでちょこっと挙げてみる。(もっともそのままではこっぱずかしいので、多少潤色した。)
「闇と青空」【シ・ドキュメンタリ・フィルム会報第44号 1970年3月】
映画は、すぐれて〈《闇の芸術》である。第一は、見ることの前提に求められる《現実の闇》。第二には、発熱した光と影のスクリーンの背後に(作り手によって)《埋蔵された闇》。第三に、取り巻く《状況としての闇》 この三つの《闇》の大きさ・コンプレックス(複合体)が僕という観客を捉える。‥中略‥三島由紀夫が『太陽と鉄』で描いた青空=みこしの担ぎ手たちが仰ぎ見た《青空》。バタイユが下半身を海に浸しながら見上げた《青空》。これらはともにまぎれもなくひとつの映像体験であり、彼らが見た《青空》とは、《闇》の陽転としての影像にほかならない。
いかにも青くて若い。
DVDもビデオも無かった時代、映画は暗くしなければ見られなかった頃の話だ。