2ペンスの希望

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『開店休業』

久しぶりに、気持ちの良い本を読んだ。
吉本隆明+ハルノ宵子(吉本多子)の『開店休業』【プレジデント社2013年4月刊】。2007年1月から2011年2月まで40回 雑誌「dancyu」に連載された“食”を巡る軽い物語だ。誰にでもある食と味の話が綴られたあと、暮らしを共にした娘の追想が添えられている。その追想の眼差しが良い。べたつかず甘すぎず、むしろ冷静で突き放したような趣がある。それでいて温かさはしっかり伝わってくる。あぁ、吉本さんは娘さんに愛されていたのだな、という感慨が湧く。(裏返せば、いい子どもに育てたな、ということだ。)気持ち良さの所以はここにある。
吉本ファンにはつとに知られた「三浦屋の肉フライ(レバカツ)」から「ヨシモト鍋(清岡卓行命名:白菜豚ロース鍋)」、最後の晩餐が温泉卵と茹でほうれん草入りの『きつねどん兵衛』だったことも記される。(ちなみに、お気に入りのカップ麺は『カップヌードル』『夜店の一平ちゃん』『きつねどん兵衛』だったそうだ。)
それにしても『開店休業』という書名は胸を打つ。
雑誌連載時はエッセイ「おいしく 愉しく 食べてこそ」だったが、本の方が百倍いい。