2ペンスの希望

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「あ、」と思うか思わないか。

翻訳家・斎藤真理子さんの連載「翻訳詩アンソロジーの楽しみ」【『図書』2020年12月号】を読んだ。「若い頃「あ、」と思った詩編をどんどんノートに書き写していった。」というくだりがあった。続けて こうある。「「あ、」と思うか思わないか。これが大事で、「あ、」がなければどんなに有名な詩でも読む人を引きとどめておくことはできない。逆に「あ、」があれば地味な一行が立ち上がってくることがある。」そうなのだ。映画も同じこと。「あ、」と思える一瞬、ワンカットワンシーンに出会えるかどうかなのだ。そのためにこそいそいそと映画館に足を運ぶのだ。過不足なく全体が良く出来て申し分ないのにどこか物足りない、ウエルメイドなのに何故かわくわくしない、そんな有名作・話題作・映画祭受賞作がままある。無い物ねだりなのは承知だが、これまで見たことがないものを見た、その興奮がない映画はつまらない。

斎藤さんの文章はさらにこう続く。「茨木のり子さんが「言葉が離陸の瞬間を持っていないものは、詩とはいえません。じりじりと滑走路をすべっただけでおしまい、という詩ではない詩が、この世にはなんと多いのでしょう」と書いている」その通り!