上方落語の長編『東の旅』導入部、お伊勢参りに向かう二人旅、煮売屋のくだり。
「酒はあるか」と問う旅人(■)に食堂の婆さん(▲)答えて‥
▲この村には良い銘酒がありますでな
■銘酒?そらけっこぉやなぁ、どんなんがあるねん?
▲「村さめ」に「庭さめ」に「じきさめ」とありますが
■あんまり聞ぃたことないなぁ。その「村さめ」ちゅうのはどぉいぅ酒や?
▲呑んでるとホロ〜ッと酔いが回ってくるなぁ
■ええ酒やなぁ、それこそ酒の身上(しんしょ)や。
▲で、村外れまで行くうちに醒める‥で「村さめ」じゃ
■なんや頼んない酒やなぁ。 じゃぁ「庭さめ」ちゅうのは?
▲ここで呑んでて、庭に出たら醒めるなぁ
■「じきさめ」は?
▲呑んだ尻から醒める
‥‥ひどいなぁといいながら、まぁ少しでも保つのがいいと「村さめ」 を注文。呑み始めるが、肴は古いし、酒もえらく水っぽい。
■ウワァ〜ッ婆さん、エゲツナイ酒やなぁ、水臭い。
酒ん中へぎょ〜さん水混ぜとんのとちがうか
▲何をいいやすかお客さん。そんだらもったいないことはしませんで。
水ん中へ酒を落としますだ。酒臭い水じゃて。
水臭い酒もいただけないが、酒臭い水では絶対に酔えない。 笑い話じゃない!