2ペンスの希望

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モモ

ちょっとした必要があって、ミヒャエル・エンデの『モモ』を読んだ。 【2005年大島かおり改訳版 岩波少年文庫127】
古くから知ってはいたが、寓意や寓話の持つ教訓臭さやお説教調を想像し、永らく敬遠してきた。食わず嫌い。六十歳を超えてはじめて手にし、それなりに面白く読んだ。時間論、時間=お金の比喩、金融資本主義批判の書など解釈・評論のたぐいはあれこれ多い。
そんなことより、訳のよさもあってか無駄なくふくよかな表現・ストーリー展開に惹き込まれながら読み終えた。
エンデが若い頃ドイツの放送局で映画評の番組を受け持っていたことも初めて知った。日本映画に魅かれ、黒澤明溝口健二を評価していた、と松岡正剛は書いている。(「松岡正剛の千夜千冊 連環編 1377夜」より)
エンデが自分で書いた挿絵が後姿や背中ばかりで、顔が分からないのも、想像力を広げさせて良い。それでも性格とひととなりはクッキリハッキリ、あいまいさは無い。
章タイトルが、「大きな都会と小さな少女」「無口なおじいさんとおしゃべりな若もの」 「食べ物はたっぷり、話はちょっぴり」などなど殆どが対比的になっているのも好みだ。 ちなみに、18章は、「まえばかり見て、うしろをふりかえらないと‥‥」
ということで、
久方ぶりに背反有理コレクションをひとつ追加。

オソイホド ハヤイ」 
モモに登場するキャラクター中 一番のお気に入り かめのカシオペイアが発する言葉。