渡辺武信さんの例を俟つまでもなく、建築家で映画評論を手掛ける人物は昔から沢山居た。昨日から、鈴木了二さんという建築家の本「建築映画 マテリアル・サスペンス」【LIXIL出版 2013年1月 刊】を読み始めている。
冒頭に置かれた「ジョン・カサヴェテス論」にこんなくだりがあった。
「知らないはずの人間に既知のような親しみを覚え、見たことも触ったこともないような事物にリアルな感触を覚える、それが傑作の条件だ。」
当たり前のことをいっているだけなのだが、鈴木さんの映画好きが伝わってくる。
行ったことのない世界の暮らし・営みに共感し、歴史も文化も風土も異なる登場人物達に同期できるかどうかは重大である。
無理筋の強引なゴリ押しばかりが目立つ昨今、真っ当な発言はそれだけで清涼剤だ。