2ペンスの希望

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擬音で

今日も春日本『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』からのエピソード。
「ト書」について。
脚本で情景や人物の行動を書く箇所(台詞以外の全て)を「ト書き」と呼ぶのだが、ここで細かいニュアンスを脚本家が伝えようとする場合、たとえば他社では、
「老いさらばえた千代吉、だがその五体はまるで鋼鉄のように固く、総ての精神力と肉体で耐えている」(松竹映画『砂の器』=脚本:橋本忍
と詩的ともいえる抽象的な表現が使われることがママある。そこが東映時代劇の脚本では、細かいニュアンスのほとんどを擬音で表現するのだ。
「ギクッ!とする」「キッと振り返る」「ヌッと現われる」「サッと退く」「ヒタヒタと迫る」‥‥。
この書き方を定着させたのが、脚本家・比佐芳武だった。

脚本を読んで働くのは役者や助監督だけやない。裏方とかいろいろおる。その全部が分かる書き方でなければならない。大学出の監督から中卒の職人、役者にも教養のあるものもおれば、ないのもおる。下品にならずに分かりやすくするには、具体的に書くことなんや