2ペンスの希望

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雪岱をもう一枚

雪岱をもう一枚 載せる。                  1924年(大正13年)『青柳』

小村雪岱さんの絵―それにつながっての仕事のどれでも、寔(まこと)に精緻にして情の醇なること、恐ら く当代に求めて得られないものを具えていた。情と言っても、啻(ただ)に人間の情のみではない。しめやかに降る雨、千草にすだく秋の虫の音、それらに情致あるは当然としても、非情の木竹、たとえば黒板塀でも建仁寺垣でも、河岸に立ちならぶ並蔵(ならびぐら)でも、一度小村さんの筆にかゝれば、あの嫋々とした美女の分身でゝもあるかのようで、電光雷雨の凄まじい光景が写されてあっても、恐ろしさより却って情趣のなつかしさを覚えさせる。」 (鏑木清方 画集『小村雪岱』序文 より
                         1942年(昭和17年)12月 高見沢木版社 刊)
丁寧な仕事は時代を超えていく 怖くて有り難いことだ