2ペンスの希望

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背負わない 気負わない

陸上競技には、体重別のクラス分けはない。審査もない。ただただ早いか遅いか、高いか低いか、数値が可視化されて誰の眼にも分かるもっとも原始的な競技だ。だから面白い。技量・力量の研鑽に加えて、場の計算、相手との駆け引き、勘も運も必要。難しくはないが、とてつもなく難しい競技だ。

どこかの洋酒屋さんの昔の宣伝文句じゃないが「何も背負わない 何も気負わない」そんなフレーズが浮かんできた。国も地元も‥余計なものは背負わず、気負わず、ひたすらに ひたむきに  ひたぶるに。無我夢中になりながら沈着冷静であり続けることが求められる。(まぁ、どんな競技でもそうなのだろうが。)

スポーツ紙で、陸上トラック女子1500mに出場した田中希実選手の記事を見つけた。【スポニチ 2020年12月4日 記事】

一志走伝    父親から贈られた言葉「一志走伝」


父・健智コーチ(50)との親子鷹でTOKYO行きを決めた。田中家には、陸上のモットーというべき言葉がある。「一志走伝」だ。

 本来は「一子相伝」で、学問や技などの奥義を子ども1人に伝えるという意味がある。漫画「北斗の拳」で有名になった言葉だ。

 3000メートル障害で日本選手権に出場した父と、北海道マラソンを2回制した最強の市民ランナー」の母・千洋さんを持つ希実は、両親が築き上げた陸上の技術や哲学が教え込まれたものの、「北斗神拳」のような過激さは当然、ない。希実の妹にも同じように、陸上のエッセンスが注ぎ込まれている。言葉に込めた思いを、父はこう説明した。

 「走りで、周囲に伝えてほしい。負けても、伝わるものがある。負け方にもかっこよさがあると思っている。自分が今、歩んでいる道は、自分で切り開いたように感じるかも知れないけど、実は周囲が整えてくれている。みんなで一緒に道をつくって行こうという思いを持ってやっている。自分たちがやってきたことを子どもに伝える点では一子相伝だけど、子どもたちは、周囲の方のために、走りで思いを伝えてほしい

 一生懸命走ることで、感謝が伝わり、感動を与えるんだ―。そんな親の思いを、娘は体現している。

田中選手の色紙にはいつもこの言葉があるようだ。

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