2ペンスの希望

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20〜25%

映画を劇場公開した場合に、制作者サイドに戻ってくる取り分は20〜25%程度だ。もっとシビアに13.5%という数字を挙げる人もいる。もちろん個々のケースは千差万別、力関係でも変わる。フラット興行(定額で映画料を払う興行)と歩合興行でも違う。今は少なくなったようだが、保証興行(劇場側が制作サイドに前売等 事前に一定程度の売上保証を求める興行)というのもある。ただ、これまで劇映画、ドキュメンタリー映画取り混ぜて何本かの公開に携わってきた狭い経験からいっても、この数字はそう外れてはいない。

具体的な数字を挙げて説明してみる。
今、平均的な客単価は1200円台だ。(【日本映画制作者連盟 日本映画産業統計】に拠れば2011年には1252円)。えー1800円じゃないのというかも知れないが、各種割引やシルバーの比率が膨らんでいることから、そうなっている。
数字を分かりやすくするために1200円とする。これを劇場側と制作・配給側が折半(50:50)で分けると600円、この600円からPA費(Printing & Advertising 費用=映画を上映するためのプリント作成費用、広告宣伝費など)や配給会社の手数料を差し引いていくと300円(ここでも数字は単純化)が制作者サイドに入ってくる額となる。
興行収入の半分が配給収入、そのまた半分程度が「手戻り」という訳だ。
仮に映画の制作費が3000万円だとすれば、300円×10万人で、やっとトントンということになる。
中小独立系、単館系の映画館で順次全国公開していく方式(上映プリントが少なくて済むのだ大半はこの方式)で、動員10万人というのは稀、べらぼうな数字だ。
興行収入換算すれば1億2000万円。2011年でいえば、ここは推測で書くが、数作だろう。それほどレアなのだ。
公開される中小独立系映画の殆どは、興行収入1億に届かない。かつては劇場公開に続いて、DVDやVTRなどのパッケージ化、TV放映など、いわゆる二次使用料が見込めて、劇場では当たらなくても、この二次使用で何とか帳尻を合わせたり黒字化も可能だった。今は二次使用も冷え込んで見込みにくくなっている。
かくして、製作資金は回収できない。儲からないどころか、回収できず持ち出し・赤字に終わる。こうした場合、プロデューサーや監督の人件費は計上されていないケースも少なくない。技術スタッフなどを別にして、ただ働きという訳だ。
それでも、極々たまにヒット作が生まれる。だから、映画を作る人・作りたい人は後を絶たずどんどん出てくる。収支、経済を考えれば「健全」とはとても言えない状態が、慢性的に続いている。
懲りないというべきか、けなげなというべきか‥‥。