2ペンスの希望

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邦題

今日は肩の凝らない横道バナシ。
田中章夫さんという学者の『日本語雑記帳』という本の中で、パソコン用語の「@」について面白い記述を見つけた。
日本では「アット・マーク」と呼ばれるのが普通だが、各国での呼称を挙げておられた。台湾では「小老鼠」(子ネズミチャン)、イタリア語ではカタツムリ、ドイツでは「抱きつき猿」。「木の枝にしがみついて丸くなっている猿」に見立てている。アラブ圏には「耳」の呼び名もあるという。本家の英語でも、whorl(渦巻)cyclone(づむじ風)cabbage(キャべツ)snai(カタツムリ)などが生れている。
さらに田中さんによれば、
松永英明さんという事物起源探究家のホームページ「絵文禄ことのは」には、
仔犬(ロシア)、小さなネコ(ポーランド)、ウジ虫(ハンガリー)、小さなサルのキンタマ(オランダ)、ブタの尻尾(ノルウェー)、ゾウの鼻(デンマーク)など愛嬌のある呼び名が、数多くあがっている。こうなると、日本の「アット・マーク」は、なんとも、風情がない。かつての日本語は、原語にはとらわれずに、赤ナス(トマト)、コウモリ(洋傘)、トンビ(インバネス)花野菜(カリフラワー)など、わかりやすい形で、外来の事物を取り入れてきたのに‥
‥以上青字部が田中さんの文章である。【岩波新書1351 2012年2月21日刊】
読んでいて、そういえば、昔の外国映画の邦題は、秀逸なものが沢山あったなぁ、と思い出した。いつの頃からか原題そのままのカタカナ表記する例が多くなってきた。英語が浸透して抵抗感が無くなったことにもよるのだろうが、映画ファンの一人としては、楽しみがひとつ減った気分だ。もっとも、カタカナ表記だが原題とは全く異なる邦題がつけられる例もあるようだ。邦画なのに英語タイトルをつけることも増えている。もちろんトヤカクいう筋合いはない。何でもありで結構だ。最近も、英語タイトルをメインに据え、マンガ原作の題名をサブタイトルにつけた映画が、大ヒットしていたけれど、包装紙ばかりカッコ良くって、中身がスカスカというのも情けない。