2ペンスの希望

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無名性

ついに「無名性」は「有名性」に勝てないのか?
耳にしたことがある話題、古くから知られてきた世界、誰にも憶えのある出来事、そんな映画ばかりがヒットし、聞いたことのないテーマ、まだ誰も知らない世界は、無視される(今の言葉で言えばスルーされる)。しょうがないのかもしれないが、やな感じだ。とりわけ映画は、先払いゆえ、中身の出来不出来より、タイトルや売り方が興行成績を左右する。止むを得ない面も確かにある。誰だってハズレを掴みたくはない。知らないものは怖いし、気持ちが悪い。しかし、見知った世界で戯れているかぎり、進歩も発展もない。生れるのは倦怠と淀みだけだろう。
映画なんかどっちでもいい、という人はいさ知らず、少なくとも映画にシンパシーを感じる人、業界にたむろする人々には映画を進化させる責任がある筈だ。なのに見知らぬ世界に足を踏み込む冒険と勇気を失っていてどうする。作る側も見る側も、神経質な貧血状態に陥ってはいないだろうか。ただ「有名性」に依拠しただけの出来損ない、箱だけ立派なマガイモノ・ニセモノ、噴飯モノが大手を振ってまかり通っているのを見るのは、つくづく情けない。