2ペンスの希望

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ナックル

若い頃から変化球が好きだった。
剛直球なんて投げられるわけもなく、青筋立てて正論をまくし立てる姿は暑苦しく感じるへそ曲がりだった。中でも憧れたのは、ナックルだった。ほとんど無回転で不規則にゆれながら落ちるへなちょこ球である。バッターには、コレが打ちづらい。狙いを定めてバットを振ってもひらりと逃げられる。下町育ちのひねくれ者には、そこらあたりがかっこよく見えたのだろう。技術が伴わないので、実際には投げられなかったが、学校時代からモーレツに憧れてきた。誰もが反対できないような正論をぶつけるよりも、斜め下からふらふらと近づきながら気がつくと相手の急所に届いていた、というのが理想だった。教師にとっては扱いにくく食えない学生だったことだろう、キット。生意気盛りを遙かに過ぎた今も、あんまり変わっていないようだ。三つ子の魂百まで、か。イヤハヤ何とも。