2ペンスの希望

映画言論活動中です

汲めども尽きせぬ泉のようでありたい、映画を作るときには、いつもそう願っている。
多義的な多面体、それが映画の魅力だ。
昔の映画を見ると、本筋のストーリーとは別の背景、ディテールが豊かにいろいろのことを伝えてくる。髪型やファッションに時代を感じ、映っている街角や街を走る自動車の型番を懐かしむ。或いは、何かを発見する。そんな経験は誰もが持っている。
丁寧にキチンと作られた映画はどれも、見るたびに新しい発見があり、見る人によっていろんな見方ができ、何かを得ることができるものだ。
厚み、奥行き、密度。ただし、難解、晦渋であってはならない。明瞭でなければならない。上手く言葉で説明できるわけではないが、見過ごせないものを感じる、練られた映画には必ずそんな力がある。
頑強な一枚岩、単純明快シンプルなメッセージで作られた映画の場合、観客は単純に見てそれが語っていることを受け入れるか拒絶するかのどちらかしかできない。楽しみはそれで終わりだ。
或る知人は、そんな映画を“祝詞映画”と呼んでいる。うまいこというものだ。祝詞やお題目で信者にのみ届くような映画は、出来損ないだ、志が低いかウデ不足だとハッキリ言う方が良い。
たとえ扱う題材・テーマが切実で良心的であっても、だ。