2ペンスの希望

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多重視

きたやまおさむよしもとばななの対話『幻滅と別れ話だけで終わらないライフストーリーの紡ぎ方』を読んだ。【2012年9月朝日出版社刊】
現実は多面体であり、多義的なのが当たり前。だから、この複数の世界をひとつにまとめたりせず、併存させて丸ごと抱える「多重の焦点付け」つまり「多重視」が重要だ、という北山の主張が面白かった。
宗教を含めて、文化というものを非常に尊重しておられるのがユング派ですよね。私たちフロイト派は、文化、文明はそれなりに評価するけれど、結構怪しい部分を大量に持っていて、どんな理想的な文化も人びとの不平を生む、最終的には悪さもするというようなところがあって、あまり文化に対して楽観的ではないんだな。」「この世の対象に純粋などなくて、どんな人為的な純粋にも裏があり、その人工の全体はいつもちぐはぐであり、その矛盾感が新たに焦点づけられたまとまりを作るが、結局その具体的な立体イメージも、裏を作って裏切り、不純なのである。だからここで、焦点の定まらないまま複数の世界を目指して、そういう目とこころの多重視の運動をリミッター(制限)付きで発生させよう」という北山の発言は、「単細胞で単眼視の純粋主義者たち」への挑戦(挑発)のように読めた。映画「不純」派としては断固北山支持である。