2ペンスの希望

映画言論活動中です

意味ある暴力

TV業界出身で、イマをときめくエンターテイメント系の映画を沢山作ってきた或る監督が、ちょっと前にこんな趣旨の発言をしていた。(どこで目にしたのかうろ覚えなので申し訳ないが出典は不明。勝手な要約でご容赦願う。)
昔TVで仕事を始めた頃、あまりにも仕事が出来ないので『電信柱』と呼ばれていた。ぼーと突っ立ってるだけで仕事に邪魔なだけの存在。しょっちゅう殴られた。理不尽だが今思えば、「意味ある暴力」だった。生放送だと、瞬時に言って聞かせないと対応できない。でも「そこに立ってるな、どけよ」と言うにも、言葉で口に出すと聞こえてしまう。そこで、足で蹴る、と。そういうわけで「意味ある暴力」なのだ。
そういう話だった。
もっとも今はそんなことをするとみんな辞めちゃうので、もう過去の話、と断りを入れていたと記憶するが‥。
身体で気付く、身体で覚える、ということが、確かに減ってきた。映画の世界がシュリンク(shrink:萎縮)するにつれて、撮影所は形骸化し、専業映画人が少なくなった。
24時間映画のことだけを考えて給金が貰える場所が消えた。映画とは別の場所でお金を稼ぐために身体を使い、残った時間をやりくりしながら映画を作る。兼業でなければ食えないとなると、時間を費やして、身体で気付く、身体で覚える「余裕」はなくなる。
畢竟、頭でっかち。  その損失は、想像以上に大きい。
覚悟して掛かるしかない。