2ペンスの希望

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海辺の叙景

つげ義春のマンガが好きだった。最高傑作というわけではないが、忘れられない一作に『海辺の叙景』がある。

1967年9月雑誌「ガロ」に掲載された。この年、つげは矢継ぎ早に新作を執筆、毎月のように発表していた。毎月発売日を待ちかねて読んだ。
当たり前のことだが、すべての表現は、そのメディア(表現媒体・表現手法)でしか表現できないものの、のっぴきならない(代替不能の)表現なのだと思う。マンガはマンガでしか表現できないものを表現しているからこそマンガなのだ。この考えは若い頃から変わらない。描線、キャラクター、ストーリー、コマ割り、サイズ・アングル、そして画面の運び方、すべてがマンガなのだ。
『海辺の叙景』のラストカットは、B5判見開き2ページを使った大ゴマだった。ページを繰った目に飛び込んできた圧巻に息を呑んだ。その印象は今もしっかり覚えている。

見えている画の向う側に、それまで見えてこなかった世界の広がりが暗示される。
その暗さ、不安、不吉。