子供の頃は何といっても杉浦茂だった。手塚より人気もあった。
何度か再発見ブームが起きて若い世代の注目を集め、今やスタンダードとなった。復刻版や回顧展も多い。杉浦漫画は摩訶不思議、奇想天外、ナンセンスなどと評されるが、まともな評論・評価はまだ現れていないと思う。あーだこーだと理屈を捏ねるより、読む方が断然面白い、と杉浦茂の漫画そのものが言っているようで、評論しているのが恥ずかしくなるのかもしれない。代表作は、「猿飛佐助」
拙なりに思うキイワードは、二つだ。オールフリー&オールフラット。オールフリーとはどこやらのノンアルコール飲料みたいだが、要するに「なんでもあり」タブーなし。描けるものは何をどう描いてもいいよ。ということである。オールフラットというのは、主役も脇役・ちょい役も皆横並び。正義の味方も悪役も対等に会話。それぞれの役回りをまっとうするだけ。どちらが偉いとか、どちらが上とかは関係なしというかお構いなし。
そのすがすがしさが漫画に溢れている。といっても青筋立ててシャカリキになるのではない。あくまで日常、平熱・平時。戦も散歩もご飯も。
杉浦漫画の魅力で忘れていけないのは、脇を固める登場人物のネーミングだ。(今思い返せば、食べ物系が多いのは、時代か)井上晴樹さんという編集者が書いた一節を挙げてみる。【筑摩書房『杉浦茂自伝と回想』2002年4月25日刊「杉浦茂は生きている!」186頁】細かいが読んでみて欲しい。同世代には懐かしい筈だ。