2ペンスの希望

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希望

日本の映画界には、もはや上がるべきメジャーなんぞ存在しない。
大手映画会社から学生諸君の自主映画まで、皆が皆低空飛行を余儀なくされている。
それでも何とか日本の映画のミライを作ろうとしている若い世代(20代30代まで)を揶揄したり、高みから説教する「大人」もいる。百害あって一利なし。
ちょっと先に生れて、映画がチヤホヤされた時代に出会っただけのくせに、「昔は良かった」「昔はすごかった」と懐かしがったり、「最近の若者は映画を見ていない」「不勉強だ」とすごむのは、恥ずかしい振る舞いだ。いかに昔の映画のつくりが丁寧で豊かだったとしても、それを自分の手柄のごとくに吹聴するのは大間違い。慎むべし。自らへの反省・自戒も込めてそう思う。
大切なのは、後を振り返ることではない。原点に戻って出直すこと、だ。
スタンダード・古典・名作は懐かしむために見るのではなく、いつだって新しい発見のために見られなければならない。逆にいうなら、常にいつも新鮮であること、
それがスタンダード・古典・名作と呼ばれるべきものの最低必要条件ということになる。

2012年5月19日、映画評論家で詩人の杉山平一さんが他界した。
97歳だった。最後の最後まで平易な言葉で、奥深くやわらかく世界を語って、去った。
2011年11月に刊行した詩集『希望』【編集工房ノア】から引用して、哀悼したい。

「わかってます」 ‥‥最終連(一部)
  きみは過ぎてきたなつかしの道を
  また辿ろうというの
  僕は見知らぬ道に向かって
  また乗り継いでゆくよ

「いま」  ‥‥一部
  もうおそい ということは
  人生にはないのだ
  終わりはいつも はじまりである