2ペンスの希望

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真ん中のご馳走をこそ

「どうして皆重箱の隅・端っこばかりほじくりたがるんだろうネ‥」先日映画好きの友人とまたぞろそんな話になった。
他の人が知らないものを見つけてきて、ひとり悦に入る、ひとに自慢したい、その気持ち分からぬでもない。よって否定はしない。訳知り顔の事情通、通人、粋人きどり‥‥誰にでもあることだ。しかしである。そんなことをする暇とお金があるのなら、いつもいつも端っこばっか漁らないで、たまには真ん中のご馳走に箸を伸ばしてみればいいのに。
ん?真ん中のご馳走って何のことかって。この話 話すと長くなるので止める。
要するに、古典・歴代の名作映画のことだとお考え願う。
「名作映画なんて時代遅れの化石。とっくの昔に賞味期限切れ。陳腐、そんなのより、いの一番に新作。旧作ならせめて埋もれていた逸品をお取り寄せ‥」知られざる〜〜、忘られた〜〜、早すぎた〜〜、今封印が解かれる〜〜、はじめて明かされる〜〜、
レジェンド・伝説の〜〜、そんな謳い文句に騙されすぎていないか。
絵画や日記・草稿の類ならいざ知らず、映画の場合、大半は何らかの形で公開・発表されてきた筈だ。数の大小はあれ幾人かの目に晒されてきたことは確かだ。同時代の人々の目がそれほど節穴だったとは到底思えない。とするなら、淘汰選別されて今に残る映画の評価はそれなりに信頼されて良かろう。邦画バブルとやらでやたら作られ公開される出来損ないの新作の山からたまさか珍しい玉を捜すより、綺羅星のごとき旧作群に一本でも二本でも触れてみることをお奨めする。コスパが良いことは保証する。
これは文学の古典・名作とおなじことだ。
さもしい発見主義・発掘主義と上げ底の新作偏重は願い下げ。厳に慎みたい。