2ペンスの希望

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「幸福感」

機会があって、古い8mmフィルムをデジタルメディアに復元保存した映画を観た。三好大輔作『8ミリの記憶』DVD45分。
8mm映画、昔は小型映画、ホームムービーなどとも呼ばれた。全国に愛好家があり、専門誌やコンテストも盛んだった。いまならさしずめデジカメかスマホでとった映像というところか。但し、フィルムはそれなりに高価だったので、だらだら撮らずここぞという時に絞ってカメラを廻したし、ある程度お金のかかることだった。
映画には、愛児の成長記録、家族のピクニックや、地域のお祭り、行事、町内の運動会などを撮影したものから、台本・セリフを書き、特撮まで敢行した凝った作りのものまで様々なものが集められていた。恐らく作られた当時は、近親者や関係者以外には退屈な素人映画だったのだろうが、時間が経つことでアクが抜け漂白されて普遍化され、無関係なのに微笑ましく観ることが出来た。
理由の大半は、「失われた時空への郷愁」なのだろうが、加えて二つのことを感じた。
ひとつは、「覗き見」趣味。あまりお薦めできる趣味ではないが、映画を観ることの底には、人の人生、人の時間を覗き見する喜びがあるのではないだろうか、ということ。
もうひとつは、個人が作ったこれらの映画に流れる「幸福感」ということ。今はもうない対象・風景への愛惜とは別に、例外なく撮影対象に注がれている「無償の愛情・限りない慈しみの眼差し」が、時間を隔ててそれを見る観客にも「幸福感」として伝播・共有されているのではないか。
「覗き見」と「幸福感」―映画のキイワードとして、も少し継続して考えてみたい。