2ペンスの希望

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A4

日本で一番大きなテレビ局で請負で仕事をしていた時期があった。その頃とても感心したことがある。巨大組織ゆえのしがらみ、軋轢、不自由‥仕事の進め方には色々あった。それでも、これは凄いなぁ、紛れもなく正しいやり方だよなぁと感じ入った。何か。
番組の企画提案はA4一枚にまとめるという方法だ。
何百万円・何千万円の予算規模の企画がA4一枚で決まる。(最近は足が遠のいたので知らないが、恐らくは変わっていないと思う。)想定予算、放送枠、制作期間、制作体制まで全てがA4一枚に集約されるようになっている。
ともすれば、企画者は、企画の良さ、面白さを伝えようと、あれもこれもと詰め込みすぎる。それが熱意だ誠意だと思い込む。結果、A4紙面には余白なくびっしり文字が並ぶ。ひしめきあっていかにも読みにくい。というか、読む気も起こらない。そんなA4は真っ先に却下だ。手にとるだけでぱっと目に飛び込んでくる、文字を読まなくても眺めるだけで、直感的に内容が立ち上がってくる、短く一言でいえる、それが肝要だった。年配者が読むのだから文字は大きくともアドバイスされた。プロが書き、プロが読むのだから、余計なお飾りはいらない。何がミソか、どこがツボか、簡潔に伝えよ。という訳だ。成る程。随分鍛えられた。
もっとも、相手によっては、添付資料満載の分厚い企画書を有り難がる向きもゼロではなかった。実際同じ頃の某大手広告代理店の仕事では、数枚のペラペラでは受けつけてもらえなくて、表紙や体裁にやたら凝ったものが持てはやされた。今だから言えるのだが、そんなものは、上げ底のパッチモンだと思った方がいい。
A4一枚に纏められないような企画は、何処かに曇りがある。