2ペンスの希望

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岩佐寿弥さん

遅れ馳せながら、岩佐寿弥さんが亡くなったことを知った。
新聞の訃報記事には「映画の上映キャンペーンの旅先で宿の階段から転落、脳内出血のため死亡」とあった。直接の面識は無かったが、若い頃から映画はずっと観て来た。1969『ねじ式映画 私は女優?』1972『叛軍No.4』1976『眠れ蜜』。そして、長い休止があった後、2002『モモ チェンガ』2012『オロ』。
1934年生まれの78歳。短命とはいえないが、36年ぶりの新作劇場公開に全国を飛び回ってお元気そうだったと聞いていた。去年の夏東京で『知られざる前衛作家岩佐寿弥 銀幕革1969〜1976』と題した特集上映が行われた。その上映パンフレットには若い映画作家松江哲明が、「「革命の映画」を作るのではなく、「映画の革命」に挑んだ男がいた。」と題してコメントを寄せていたことも知った。
同時代の小川紳介さんや土本典昭さんとは、異なる道を歩き続けた映画人だった。
生前或るウエブマガジンのインタビューに答えた岩佐さんの言葉を挙げる。
映画がどこをどう辿って、どこへ行き着くか自分でもわからない。それがスリリングなんです。これは本物の人生に似ています。それは、どこでどのように折れ曲がるか分からない。(中略)現実を虚構化し、虚構を現実化するわけですから。現実なのか虚構なのか不分明であるような状態。それが私の好きな時間芸術としての映画です。つまり、映画は映画なんですよ。
【neoneo web「ドキュメンタリストの眼 岩佐寿弥インタビュー」より】

いまだに、ドキュメンタリーとフィクションは違うとか何とか言ってる頓馬な連中は絶えないが、「現実を虚構化し、虚構を現実化するわけですから」この一点においてすべての映画は同じなのだ。 岩佐さんはそのことを良く知っておられた。改めてそう思う。