2ペンスの希望

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大学と映画 大学で映画

神戸大学で開かれた「映像、アマチュア、アーカイヴ」というイベントに出掛けてきた。
併せて、東京藝術大学映像研究科第二期生修了作品集2008というDVDも見た。
そして、大学と映画のかかわりについて考えた。
産業としての映画が惨憺たる有様になっている中で、大学や専門学校における映画学科(映像学科)のみが大繁盛(空元気?)なことについては何度か語ってきた。
映画総体の貧血状態という基本認識に変わりはないけれど、上述の二つ(イベントと映画)それぞれに刺激的だった。
イベントでは、松谷容作さん(神戸大学大学院人文学研究科研究員)のコメントが面白かった。松谷研究員が語ったのは、大正末期から昭和にかけて活躍した個人映画作家森紅(もりくれない:本名森比呂志)について。関西の小型映画サークルのリーダー・イデオローグ的な存在だったらしい森は、常々こう発言していたという話だ。
パテ・ベビー(9.5mmフィルムを使う小型映画フォーマット)を使うこと自体がすでにアマチュアなんだ。ただし、大切なのは、自ら名乗ること=“アマチュア”を自認・自称することだ。他者からそう呼ばれるのではなくてね。
松谷研究員は、「戦略としてのアマチュア=当時の検閲や資本や商業性から逃れること=自由な立場で作れる条件の確保としてのアマチュアリズム」ではないかと指摘していた。(会場では、議論は深まらずスルーされていたが‥。)これまでともすれば、貶めの言葉として語られてきた“アマチュア”という言葉を自認・自称することの“戦略性”として捉え返す視点が面白かった。
もうひとつは、DVD鑑賞。一部で評価が高いらしい濱口竜介さんの大学院(研究科)修了作『PASSION』を見た。昨今の日本の商業映画より、数段よく出来ていると感じた。少なくとも青山何とかさんとか園何とかさんの最新作なんかよりはずっと見られた。(もっとも映画は見る人の勝手、評価は人それぞれ。よってこれも個人的な感想以上ではないのだが‥)
松谷研究員も、濱口監督も、イマドキゆえなのか、エラクこんがらがってしまった状況=見かけの氾濫と手に負えない混乱の渦中にあって、珍しく、「映画について語ること」「映画を見ること」の幸福感を、薄っすらとでも味あわせてもらえた気分だ。悪くない。
キツサはキツイままだし、遠回りしながらしか近づけない混沌は相変わらずなのだが、「この世界の成り立ち」や「人間のありよう」についての理解の深まり、胸の昂ぶりを覚えた。