2ペンスの希望

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余計と余白

立て続けに二本、邦画を観た。といってもDVD鑑賞だが。
いやぁ、出来の差が酷かった。(例によって、題名は伏せる。)
一本は、自身の戦争体験を元にした超ベテラン監督の反戦映画。
2011年国内の映画賞を総なめした「話題作」。
もう一本は、続々映画化される売れっ子芥川賞作家の愛憎劇。
女優さんの熱演(=結構な濡れ場に挑戦したということ。脱がないけど)もあってか2013年老舗映画雑誌のベストテン入りを果たし歴史ある海外映画祭で審査員特別賞を頂戴した「問題作」。
かたや、計算した構図と様式で揺るぎなくみせる。ちょい役に至る一人一人にまできめ細かな演出で陰影を施し、揺るぎない仕上がりで、最後まで飽きさせない。
一方は、登場人物の誰一人にも感情移入できないまま見終わった。申し訳ないが伝わらなかった。 「技ありのイッポン」 対 「技なしの問題作」。
多分、基本的な設計・台本の作りが違うのだ。
一方は、余計なものがなくて、余白はたっぷり。 他方は、余分なものばっかりで、余白も余裕もあったものじゃない
軍配はハッキリしていた。 とはいえ、二本だけ見てとやかく言うつもりはない。
構図と様式が古くさく図式的で分かりやすすぎる、鼻についてわしゃかなわんという向きもあろう。分かりにくいグダグダ感がいいんだ、何もかもが中途半端な不可解こそ、不透明な現代を映して素晴らしいという評価もあろう。 蓼食う虫も好き好き。
映画なんて見る人の勝手だ。それぞれが生きる時代の中で、個人的な体験と感覚を背負いながら見るものだからだ。(この項つづく)