2ペンスの希望

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意見陳述

かつて東京地方裁判所刑事第701号法廷に立った被告人赤瀬川原平(克彦)は、
自らもその一員である前衛芸術グループ「ハイ・レッド・センター」が1964年に行った
絵画行為「首都圏清掃整理促進運動」(下記:写真© Hirata Minoru)について
こう意見陳述した。

彼らの「直接行動」アートは、当時ハプニングとかパフォーマンスと呼ばれた。
掃除の様でありながら掃除ではないこの行為は何なのでしょうか。当人達はこの様な行為に対して、客観的名前を付ける意志はないのであります。おそらくこれもまた論理的に、ことばによって完全に説明する事は出来ないでしょう。そしてそれを見る者もまたことばを用いて完全に理解する事は出来ないのです。おそらくそれが芸術といわれるものの本来の原始的な姿なのだと思います。
 しかしことばで理解出来ない、つまりくだけていえば「わけのわからない」という事は、滅茶苦茶だというのではなくて、「芸術」が究極では論理的なものではないという事と、又作者が相手にそれを論理的な形で伝える意志がないという事です。とりわけ絵画という原始的な芸術、或は原始的な発想では、わけのわからないという事自体が明確になって来ます。或は芸術というものは理解するものではないのかも知れません。

        【現代思潮社刊『オブジェを持った無産者』昭和45年5月25日 114P】