2ペンスの希望

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スタッフ論 職能論

大昔のことだ。映画制作会社の職場で、スタッフとは誰か、職能とは何か、といった話題を飽きもせず、毎日毎日話し合っていた時期がある。
或る時、スタッフの職能を分かりやすいシンボルマークで表わしてみたらどうなるか?という話になった。(いまならアイコン化?)
「さしずめ、撮影は〈目〉、録音は〈耳〉かな」と誰かが言った。
 成る程ね、と皆が相槌を打つ中、ベテランキャメラマンの一人がこう言った。
撮影は〈足〉。手持ちでもブレナイ短くてがっちりした足=安定した足腰こそが身上、〈目〉というなら、それは監督のものだ。隅々までよく見えていること、目がいいことが監督の第一条件。視野狭窄では務まらない。」現場から生まれた言葉だと感心した。
助監督は〈手〉だね、とか、制作は〈口〉だね、と、ひとしきり盛り上がった。
〈腕〉という言葉は最後まで出なかった。 〈腕〉はスタッフ全員に求められる共通項・必要条件だからだ。
黙って聞いていたプロデューサー氏がぽつりとつぶやいた。
プロデューサーは、〈口〉だとか〈お金〉だとかよく言われるが、僕は〈ハート(心)〉だと思う。ときに冷たく、ときに温かく。鉄の心臓、毛の生えた心臓、‥‥」
今でも強く憶えている。